妊娠糖尿病とは・・・原因、症状、治療などのまとめ

妊娠糖尿病とは・・・原因、症状、治療などのまとめ

妊娠糖尿病とは何か

妊娠糖尿病(にんしんとうにょうびょう)とは、妊娠前に糖尿病を患っておらず、妊娠中にはじめて病気の症状があらわれるか、病気にかかっていることが発覚した血糖値の異常のことをいいます。

この妊娠糖尿病と判断されるには条件があり、血液検査である75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)の結果で診断が下される形になります。
試験の結果、空腹時の数値が92mg/dl以上、1時間値が180mg/dl以上、2時間値が153mg/dl以上のいずれか1個でも該当するものがあれば、その結果が出た人に関しては妊娠糖尿病を引き起こしていると判断されることになるのです。

また、この75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)の前には、妊娠糖尿病の早期発見のため、妊娠の初期と中期でスクリーニング検査を受けることになります。
妊娠初期のスクリーニングで随時血糖値が100mg/dl以上、妊娠中期のスクリーニングで随時血糖値が100mg/dl以上か、50gブドウ糖チャレンジテストと呼ばれる試験の結果で1時間値が140mg/dl以上を示した場合、75gブドウ糖負荷試験(OGTT)を受ける形になるわけです。

なお、妊娠糖尿病と区別しなければいけないものとして、いわゆる明らかな糖尿病と呼ばれるものがあります。
空腹時血糖値が126mg/dl以上、HbA1c(JDS)が6.1%以上、随時血糖値が200mg/dl以上あるいは75gOGTTで2時間値が200mg/dl以上、糖尿病網膜症がみとめられる、このいずれか1個でも該当するものが明らかな糖尿病です。
妊娠糖尿病にはこの明らかな糖尿病は含まれませんので、混同することがないようにしましょう。

以上、妊娠糖尿病とは何かを診断基準を交えて説明しましたが、やはり気になるのは仮になった場合、どのようなことが引き起こされるのかという点ではないでしょうか。
これに関しては、母親だけでなく子供にまで影響が及んでしまうリスクをはらんでいることに注意しなくてはいけません。

母親が妊娠糖尿病にかかると、2型糖尿病へと移行する恐れがありますし、子供が巨大児になる可能性が高くなり、さらには生まれたあとには低血糖や呼吸障害といった問題を招く危険性まで増してしまいます。
また、子供が巨大児になると出産では帝王切開が余儀なくされることになり、母体への負担が増大することにもなるのです。

母子ともに危険にさらされる深刻な病気ですので、なるべく子供を授かる前の段階で血糖値の検査を受け、問題の有無を確認し適切な対処をすることが大切といえるでしょう。

妊娠糖尿病の原因

妊娠糖尿病にかかってしまう主要な原因は、インスリン拮抗(きっこう)ホルモンと呼ばれるもの(=プロゲステロン、エストロゲン、コルチゾール、プロラクチンなどの種類がある)にあります。
これは女性の胎盤から生み出されるホルモンであり、血糖値を下げる役割を果たす、すい臓から生み出されるインスリンと呼ばれるホルモンに対抗し、作用を弱めます。
この作用を弱めることをインスリン抵抗性の増加といいますが、妊娠糖尿病でない人の場合は抵抗性が仮にあったとしても、抵抗性を上回るだけのインスリンの分泌が起こるのが普通です。
しかしながら、妊娠糖尿病にかかっている人だとインスリンの分泌に異常があり、インスリン抵抗性の増加を上回るだけのインスリンが生み出せず、高血糖状態を招いてしまうのです。

ほかに妊娠糖尿病を引き起こす原因として片棒をかついでいるものとしては、酵素が挙げられます。
酵素というと酵素ダイエットがブームになり、いまや定番のダイエット法になっているため、体によいものと思って疑わない人は少なくないでしょう。
しかしながら、酵素と一口にいっても非常に数多くの種類があり、中には体に悪さをするものもあるのです。
たとえば胎盤でつくり出されている酵素もその中のひとつであり、インスリンを破壊してしまうのです。
これによりインスリン抵抗性が増加するのが助長され、インスリン抵抗性に対抗するだけのインスリンの分泌量を確保することが妨げられてしまい、血糖値が高まりやすくなってしまうというわけです。

なお、インスリン抵抗性の増加は多くの場合、妊娠中期以降に起こり、後期ともなるとより多量のインスリンが必要になるため、血糖値が高まりやすくなります。
妊娠初期に高血糖状態になっているケースだと、この段階ではまだインスリン抵抗性が増加していないため、妊娠する前に既に高血糖状態を招いていた疑いがあるでしょう。

また、家族に糖尿病を患っている人がいる、自分自身が35歳以上、肥満体型、尿糖陽性、妊娠高血圧症候群、羊水過多症であるといった人は妊娠糖尿病になるリスクが大きいため、とくに妊娠計画段階で血液検査を受けておくことが望ましいといえるでしょう。

妊娠糖尿病の症状(合併症)

妊娠糖尿病にかかってしまった場合には、母親だけでなくおなかの中にいる子どもや生まれてきた赤ちゃんにまで影響が及ぶリスクがあります。
まず、母親に引き起こされる症状としては、インスリンが正常に作用しなかったり、分泌が悪かったりすることによって、高血糖状態に陥るのが代表的です。

この妊娠糖尿病により血糖値が高いと、実にさまざまな合併症が引き起こされてしまう可能性があります。
早産や流産、従来の妊娠中毒症に該当する妊娠高血圧症候群、尿路感染症、羊水過多症といった合併症が起こる恐れがあり、さらに出産の際には帝王切開を選択しなければいけなくなるケースもあるのです。

次におなかの中にいる赤ちゃんへの影響ですが、先天奇形、巨大児、発育遅延といった正常な育ち方がしなくなるトラブルのほか、子宮内胎児死亡、胎児仮死といった赤ちゃんの命に関わるような深刻なトラブルを招くリスクもあるのです。
なお、前述した母親が帝王切開を選択しなければいけなくなるのは、赤ちゃんがおなかの中で大きくなり過ぎてしまう、巨大児の合併症が原因となります。

帝王切開は開腹手術のため自然分娩と比較して母体の回復が遅く、縫合不全による出血のほか、感染、肺塞栓症、腸閉塞といった合併症を引き起こす可能性があり、さらには費用も高くつきやすくなるなど、身体的、経済的にも負担の大きなものとなってしまいます。
また、無事に出産を終え、母子ともに健康に過ごすことができたとしても、次に子どもを授かった際には子宮破裂、胎盤癒着といったトラブルを招く可能性が高まってしまうのです。

そして、最後に生まれてきた赤ちゃんへの影響に関してですが、低血糖症、低カルシウム血症、高ビリルビン血症、多血症、呼吸障害、肥厚性心筋炎といったトラブルが起こりやすくなります。
せっかく誕生した赤ちゃんを合併症によって苦しめることになるのは、母親にとってつらいことこの上ないでしょう。

冒頭でも記しましたが、上記のように妊娠糖尿病は母体と子どもにさまざまな問題を起こす危険性があります。
予防に努めるのはもちろんのこと、妊娠計画段階で検査を受け、仮にかかってしまった場合には適切な治療を受けていくことが大切といえるでしょう。

妊娠糖尿病の治療方法1/食事療法

妊娠糖尿病の治療の基本は食事療法です。
日々の食事で血糖管理をしていくことになるのですが、妊娠中の血糖コントロールには目標値というものがあります。
食前血糖が70~100mg/dl、食後1時間が139mg/dlまで、食後2時間が119mg/dlまで、HdA1c(JDS)が5.0%前後、グリコアルブミン(GA)が15.0%前後という数値を目指さなくてはいけません。

また、食事療法を受ける際に気になるのは何がどのぐらい制限されるのかということでしょうが、1日あたりのエネルギー摂取量を調整する必要があります。
実際には医師の指示にしたがう形になりますが、基本的には妊娠していない状態での標準体重(kg)×30kcal/kg+妊娠初期、中期、末期、産じょく期の各期における付加量(kcal)をプラスした量を摂ることになるでしょう。
これを通常は1日3回の食事で摂取するのですが、難しい場合には1日5回や6回にわけて摂るケースもあります。
その上で栄養バランスに気を配る必要があり、とくに妊娠しているあいだ足りない状態になりやすい鉄分やカルシウム、鉄分の吸収をサポートするたんぱく質やビタミンC、カルシウムの吸収を助けるビタミンDやたんぱく質、おなかの中にいる子どもの神経管欠損症を防ぐために必須な葉酸を積極的に摂取していくことが推奨されています。

それから、妊娠中は従来の妊娠中毒症に該当する妊娠高血圧症候群に注意しなければならず、妊娠糖尿病の場合は合併症として引き起こされやすいため、食事でかからないようにしなくてはいけません。
血圧は塩分を摂り過ぎると上がるというのは有名な話ですが、妊娠高血圧症候群を未然に防ぐためには、1日あたり6~8g程度までを目標に塩分摂取量を制限していくことが大切です。

そのほか、妊娠中は多少なりとも体重が増加するものですが、太りすぎややせすぎは母体の健康を考えるとよろしくありません。
したがって、適切な体重管理をしていく必要がありますが、BMIの体格区分に応じて推奨体重増加量は異なります。
BMIで低体重に該当する人は妊娠全期間を通じて9~12kg、中期~末期に関しては1週間あたり0.3~0.5kg、BMIで普通に該当する人は全期間で7~12kg、中期~末期は低体重と同様、BMIで肥満に該当する人は個別対応という扱いになりますので、参考情報として覚えておくとよいでしょう。

妊娠糖尿病の治療方法2/運動療法

妊娠糖尿病の治療は食事療法が基本になりますが、運動療法も効果的で、治療方法のひとつとして医師にすすめられることがあります。
妊娠中なのにもかかわらず体を動かして大丈夫なの?という人もいるかもしれませんが、あくまでも基本的にではあるものの、飛んだり跳ねたりしなければ大丈夫です。

まず、どのような運動が可能なのかについてですが、有酸素運動の中で身重な体でも安全におこなえるものが挙げられます。
ウォーキングが代表的ですが、妊娠中の女性向けにマタニティスイミング、マタニティビクス、アクアビクス、マタニティヨガといったものもあります。
この中でウォーキングに関していうと水中ウォーキングもありますが、マタニティスイミングやアクアビクスも同様に水中で体を動かします。
水中でおこなう有酸素運動は、そうでない有酸素運動より足腰への負担が軽く運動効率がよいため、身重な体をいたわりながら高い運動効果を期待することができるでしょう。

なお、運動療法に望める効果ですが、基礎代謝アップによる血糖コントロール改善、血のめぐりの改善、出産に備えての体力や筋肉アップ、肥満の改善や防止、肩こりや腰痛の改善といったものが挙げられます。
また妊娠中はホルモンバランスや自律神経が乱れてストレスが溜まりやすくなりますが、体を動かすと発散することにつながりますし、よい気分転換にもなるでしょう。

それから、推奨されている運動のタイミングですが、食後1~2時間後、午前10時~午後2時までのあいだがいいといわれています。
なお、時間帯に関しては、子宮収縮が1日の中でもっとも少ないというのがおすすめされている理由です。
運動時間に関しては1日1回あたり15~30分程度、日数に関しては1週間に3~4日程度を目安に実践することがよいとされています。

ただし、運動療法はだれでも実践可能というわけでなく、本人の健康状態次第ではやってはいけない場合もあります。
もし運動してはいけない人がした場合には病気の治療のさまたげになり、かえって健康状態を悪化させる恐れがありますので、運動療法をする際には自己判断ではなく必ず医師の判断を仰いでください。
また、運動療法をはじめるにあたっては、医師に説明された注意点をしっかりと守り、安全におこないましょう。

妊娠糖尿病の治療方法3/薬物療法

妊娠糖尿病の治療では、普通はまず食事療法や運動療法をおこない血糖コントロールをしていく形になります。
これで血糖管理の目標を達成することができればいうことなしですが、目標達成にいたらない人も少なくありません。
仮に食事療法や運動療法が功を奏さなかった場合にどうするかが問題となりますが、薬物療法を取り入れることになるのが一般的です。

糖尿病に関する知識が少しでもある人だと一度ぐらいは見聞きしたことがある言葉でしょうが、薬物療法ではインスリンが使用されます。
食事療法や運動療法によって目標値まで下げることが叶わなかった血糖を、インスリンを注射することによって下げ、数値をコントロールするのです。

実際にインスリン療法を開始することになった場合、妊娠のどの段階にあるのかによって、注射の量を調整する必要があります。
たとえば、妊娠初期では多くの量を注射しなくてもいいのですが、中期以降は増量しなければいけなくなります。
これにはインスリン感受性やインスリン抵抗性が関係しているのですが、妊娠初期は感受性が高くなり、中期以降は逆に抵抗性が高くなるため、必要量が少なかったり多かったりするわけです。
妊娠末期には初期に比べるとかなり多くのインスリンを注射しなければいけなくなりますが、子どもを出産したあとは一転して必要量が減少するのが一般的です。

なお、簡単に説明しておくと、感受性が高いというのはインスリンによる効果を得やすい状態のことを意味しています。
このような状態でインスリンを多量に注射すると効き過ぎてしまい、低血糖を招いてしまう恐れがあるのです。
反対に、抵抗性が高いというのは、インスリンによる効果が得がたい状態のことを意味しています。
この状態でインスリンの注射量が少なければ、高血糖を招いてしまいかねません。

なお、インスリンは自己注射することになりますが、薬物療法をはじめるにあたっては指導を受けられますので安心してください。
また、注射量の調整は自分で血糖値を測定できる機器、血糖自己測定(SMBG)を使用することで示された数値を基準にしておこなう形になります。

妊娠糖尿病における産後のフォローアップ

妊娠糖尿病は出産後に治る人の割合が高いのですが、人によっては治ることなく2型糖尿病に移行してしまう人もいます。
なお、移行するまでの期間の長さには個人差があり、産後数ヶ月間という人もいれば、産後10年間以上という人もいますし、もっと長い人だと産後20年間や30年間という人までいるのです。
10~30年間という長期的なスパンでみた場合、すぐに糖尿病に移行するケースと比較すると、妊娠糖尿病経験者が2型糖尿病を発症している割合はかなり高くなっているといわれています。
したがって、妊娠糖尿病を経験した人は出産を迎えるまでだけでなく、2型糖尿病に以降してしまわないためにも産後のフォローアップが非常に重要になってきます。

まず、産後のフォローアップといってもいったい何をするの?と思った人もいるでしょうが、これは糖尿病の「型」に応じて異なります。
糖尿病型に該当する人は糖尿病治療として食事療法、運動療法、薬物療法を受けなければいけませんし、予備軍といわれる境界型の人も食事療法や運動療法に取り組み、3ヶ月ごとや半年ごとに医療機関で診察や検査を受けることが大切です。
また、まったく問題がない正常型に該当する人も、生活習慣が乱れると糖尿病を招くリスクが増大しますので、日々の食事内容に気を遣ったり、運動不足にならないようにしたりするほか、1年間に1度程度は医療機関を受診したほうがいいでしょうし、何事もなければだれより本人の大きな安心につながるでしょう。
なお、型に応じてフォローアップをしていくと述べましたが、これは産後すぐ、1~3ヶ月間が過ぎた段階で75gブドウ糖負荷試験(OGTT)を再び受け、その結果に応じて方針が立てられることになります。

そのほか、妊娠糖尿病を経験したあと、2型糖尿病を引き起こしやすい人というのがあります。
インスリン分泌量が比較的乏しかった人、食事療法だけでなくインスリン療法を受けた人、太っている人、血糖値が出産までずっと高かった人、比較的早い段階で妊娠糖尿病と診断が下された人が挙げられますので、1個でも該当する問題があったという人は定期的に医療機関で検査を受けて現状を把握し、予防に努めましょう。

スポンサーリンク

妊娠糖尿病とは・・・原因、症状、治療などのまとめ 関連ページ

インプラント治療との関係
インプラント治療とは、体に埋め込む形の医療機器や、それにまつわる治療法のことを言います。 心臓のペースメーカー […]
糖尿病患者の喫煙はどうなのか
目次1 喫煙は百害あって一利なし2 糖尿病患者への害 喫煙は百害あって一利なし 喫煙は交感神経を刺激して血糖を […]
心房細動との関係
心房細胞になると心拍の動きが過剰に増え、1分間で300回以上にもなると言われています。 通常であれば、安静時に […]
微量元素との関係
微量元素の不足が糖尿病などさまざまな病気に関わっているのではないかという研究は昔からされてきました。 微量元素 […]
性格との関係
糖尿病と人の性格には関係があるのでしょうか。 昔から「病は気から」と言われ、気の持ちようが病気のかかりやすさ・ […]
口の渇きについて
目次1 ドライマウス2 なぜ口が渇くのか ドライマウス 口の渇きは、「ドライマウス」とも呼ばれ、口がカサカサし […]
コーヒーとの関係
目次1 抗酸化作用とは2 クロロゲン酸がコーヒーには含まれている3 コーヒーは糖尿病のリスクを下げる 抗酸化作 […]
口臭との関係
糖尿病になると口臭がきつくなるという話を聞いたことがあるでしょうか。 糖尿病による口臭の原因はいくつかあります […]
リウマチとの関係
目次1 リウマチは合併症ではない2 免疫が暴走するのはなぜ? リウマチは合併症ではない 結論から言うと、リウマ […]
低体温との関係
目次1 低体温とは2 免疫と感染症3 予防と低体温の克服 低体温とは 低体温とは、平熱が36度以下の状態を指し […]

トラックバックURL

http://tonyobyo.minaoso.info/%e5%a6%8a%e5%a8%a0%e7%b3%96%e5%b0%bf%e7%97%85%e3%81%a8%e3%81%af%e3%83%bb%e3%83%bb%e3%83%bb%e5%8e%9f%e5%9b%a0%e3%80%81%e7%97%87%e7%8a%b6%e3%80%81%e6%b2%bb%e7%99%82%e3%81%aa%e3%81%a9%e3%81%ae%e3%81%be/trackback/